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国会で不正税還付を追及された高市総務大臣

3月22日の参議院総務委員会でのことである。民進党那谷屋正義議員と江崎孝議員が高市総務大臣の不正税還付問題を取り上げた。自身が代表を務める政党支部に多額の寄付をし、所得税の還付を請求し、多額の還付金を得ていた問題である(表1、表2 高市総務大臣と森裕子議員の税還付)。
質疑の模様は、参議院インターネット中継で観ることができる。
https://www.webtv.sangiin.go.jp/webtv/index.php
那谷屋正義議員2分~39分
江崎孝議員1時間49分~2時間5分
議員らは、「高市議員が代表を務める〝自由民主党奈良県第二選挙区支部〟の平成24年の収支報告書をみると、同支部は同年11月24日に1000万円、12月17日に220万円を高市議員に寄付、一週間後の12月25日高市議員が同支部に1000万円を寄付しているが、一旦もらったお金を元に戻したとしか見えない。これで還付を受けるというのは、国民は納得がいかない。」(平成24年 支部収支報告書の抜粋)
「議員が、自分が支部の代表である支部へ寄付するということが本当に寄付といえるのか。」
「これが合法だからといって、じゃ国会議員がみんな同じ手を使って還付をする、もしそうなった場合、大臣としてどんなふうに見解を述べられますか。」などと厳しく追及。
高市総務大臣は、「名誉を傷つけられまた告発されるから、今後は一切還付の申請はしない」と言っただけで、自分の非は一切認めず、苦しい言い訳に終始した。
どんなやりとりだったのか、かいつまんで紹介する。
告発者を非難する呆れた大臣
こんな発言があった。「法律に基づいた行為であるにもかかわらず、こうして告発をなさり、そしてマスコミ各社にも流された告発者の行為というのは、私は、不当に公人のイメージを傷つけることを狙ったものだと考え、大変残念にまた悔しく思っています。」
マネーロンダリングで税金を不正に受け取ったのは高市大臣である。自分は被害者で告発者に問題があると云わんばかりの開き直りには呆れるばかりだ。
「国税当局が合法と判断した」と繰り返したが‥‥ 
高市総務大臣は「あくまでも法的に違法性はないということでございます。」「それをまた税理士さんが判断された上で、税務署がまたこれを、国税当局が適切に判断をされるものでございます。」と何度も答弁した。
確かに、政治家が自ら代表を務める政党支部に寄付して税還付を受ける行為は法律で禁止されていない。岩井奉信・日大教授はMBSテレビのVOICEという番組で「法律的には規制がない。今の制度の枠組みでは違法でない」と解説した。本当に規制がないのか、租税特別措置法を確認した。なんと、規制は存在していた。同法41条の18第1項に「寄付した者に特別な利益を及ぶと認められるものは除く」と明記されている(租税特別措置法の解説)。すなわち、政党支部が寄付した者にとって特別な利益を及ぼす団体と認められれば、寄付者は税還付を受けられないという至極当然の規制である。不届きな政治家たちがこの条文を無視し税還付を受け続けていたのである。
私は、国税庁及び奈良税務署(森裕子議員の場合新潟税務署)にこの条文がどのように扱われているかを確認した。国税庁は「個人の課税について違法かどうかを調べたり、判断することはない。それは所轄税務署の仕事である。」と逃げた。税務署はどうか。「条文があることは知っているが、違反かどうかを判断できる情報がないので、"寄附金控除のための書類"と"寄付金領収書"が提出されれば還付金を交付する。」と回答した(寄附金控除のための書類例)。さらに、両税務署に、判断材料となる収支報告書等を送付し、両議員の寄付先が〝寄付した者に特別な利益が及ぶと認められる団体„にあたるか否かの判断を問うた。個人課税部門の担当者は「情報提供に感謝する。納税者としての貴方の怒りもよく分かる。これから署で審査する。但し、審査した結果ならびに寄付者に対し、いかような処置(返納等)を下すかは、個人情報なので貴方に話すことはできない。」と回答した。
上述の通り国税庁も税務署も合法かどうかの判断をしていない。高市総務大臣は国会で虚偽答弁を行ったのである。
特別な利益が生じるため高市議員の税還付は違法
高市氏が代表を務める支部の収支報告書は、高市氏の奈良事務所の収支報告書を兼ねているが、その支出の多くは奈良事務所のそれである。その支出の中に、高市氏に宛てた1220万円の寄付もある。これらのことから、同支部が、寄付者である高市氏に特別な利益を及ぼす団体であることは明らかである。従って高市氏は税還付を受けることができない。税還付を受けたとしたら法違反である。得た還付金は当然返納しなければならない。私たちは、奈良税務署(及び新潟税務署)に、高市氏(及び森議員)に対し還付金の返納を求める要求をした。
1000万円寄付は還付目当ての「みせかけの寄付」
高市総務大臣は、1000万円の寄付について「基本的に、12月でございますから、支部の職員に対するボーナスなども払ってしまい、もう全く支部を運営するお金がなくなったということで、当時相当苦労し、困ったのを私覚えておりますけれども、とにかく普通口座、自分の口座のある銀行を回って、苦労して、それを支部に対して寄付をしたということが事実でございます。」と答弁した。
支部の資金が底をついたかどうか疑わしい。底をついたことが事実だったとしても、資金が少なくなった原因は、高市氏が直前に1220万円を引き出したからである。1220万円を引き出さなかったら、寄付は不要だった。1000万円寄付は1220万円を引き出したための穴埋めである。穴埋めは真実の寄付ではない。
さらにいえば、底をついたとしても、1000万円は投入し過ぎである。実際、収支報告書上の平成24年の繰越金は 円であった。12月に全く寄付しなかったとしても、資金はショートしていなかったのである。
「12月には支部の職員に対するボーナスなどで支部の運営資金がなくなった」と言っているが、この説明も納得できない。支部には専属の職員はおらず、高市事務所の職員が兼務していると思われる。従ってボーナスは支部から支払われていないはずである。ボーナスが支部から支払われたとしても、支部の年間の人件費は 11,628,147円(表1)でしかなく、12月資金が底をつくほどのボーナスは支給されていない。「12月は支出が嵩んで運営資金がなくなった」も、虚偽の説明であろう。
高市氏の1000万円の寄付が見せかけの寄付で、還付金目当ての一時的資金移動と判断したので、私たちは告発に及んだ(告発状)。
平成21年支部寄付は1600万円、還付は480万円
支部の平成21年収支報告書の収入の部には、高市氏が7回に分けて約1600万円を支部に寄付した旨が、支出の部には、支部が2回に分けて計780万円を高市氏に寄付した旨が記載されている。相互に寄付のやり取りを行っているのである。このような場合、高市議員の寄付はもらった寄付を戻したと考えられるから、真実の寄付ではない。寄付と見せかけて多額の還付金を受け取ったのは、平成24年だけではなかったのである(平成24年 支部収支報告書の抜粋)。
政治家の税還付はなくならない 
与野党問わず、政治家の税還付は広がっている。国会議員にとどまらず、都議、府議、県議、市議の間でも蔓延している。多額の税金が、不届きな議員に奪い取られているのである。
税還付の手続きは簡単である。支部収支報告書の収入の部に、寄付した旨の記載をし、翌年に〝寄附金控除のための書類〟を作成し、選挙管理委員会で承認印をもらい、それを税務署に提出することで、何のチェックもなく還付金を受け取ることができる。数枚の書類を作成するだけで、何百万円のお金が手に入るのである。しかも還付金を得たことは個人情報なので外部には知らされない。一度味を占めればやめられなくなってしまうのだろう。
税還付をする政治家は迂回寄付という手を使う。一旦支部に寄付したお金を「自らの資金管理団体」に移動(迂回寄付)し、「自らの資金管理団体」で自由に使ったり、自分の手元に戻すのである。このようにすれば、支部が代表だけの団体とは見られないし、一応支部に寄付しているのだから税還付も受けられる。税法上もセーフである。
法律を変えるしかない
こんな不条理がまかり通るのは法律が悪いからである。この問題を根絶するには、政治家を寄附金控除の対象から外すこと、そして、政治家が還付を行ったら、刑事罰を科すことである。
日本維新の会が昨年9月、政治家やその家族を寄付金控除制度の対象から外す租税特別措置法改正案を昨年の臨時国会に提出したが、審議されず、廃案になった。今国会に同じ内容で再提出したものの、成立の見通しは立っていない。高市総務大臣や森裕子議員が起訴され世論が高まらないと、国会は動かないのだろうか。
国会議員の質の低下は目を覆うばかりである。このような議員に私たち国民の将来が託されているかと思うと情けなくなるし、不安でもある。

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この記事を書いた人

志岐武彦のアバター 志岐武彦 一市民が斬る!! [Civil Opinions Blog]

日本の政治、行政、司法が、どうしようもなく劣化してしまったことを憂う一市民です。私達は、5年間の調査で、最高裁事務総局が管理する検察審査会が小沢一郎議員を架空議決で起訴議決してしまったことを確信しました。2012年には『最高裁の罠』(K&Kプレス)を著しました。2015年には、「最高裁をただす市民の会」のホームページを立ち上げました。

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